はじめに
低用量ピルは、月経困難症の女性の生活の質を上げるのに必要不可欠なものとなっております。しかし、低用量ピル内服にて片頭痛が悪化したり、静脈洞血栓や脳梗塞などのリスクが上がります。安全に低用量ピルを使いながら、頭痛を改善するためにも当院頭痛外来にご相談ください。
『低用量ピル』について動画でもご覧いただけます
片頭痛が、低用量ピルによって悪くなるのは何故?
片頭痛は、エストロゲンの上下(ピル、出産後、更年期、生理)によって誘発、増悪します。
片頭痛は、女性に有病率が多い疾患です。
片頭痛が発症する年齢として多いのは、2次成長期の中学校から高校生の時が多いです。しっかりとエストロゲンが分泌され始める時期に一致しています。
妊娠中の女性は片頭痛があまり起こらなくなる事が特徴です。生理もエストロゲンの低下がトリガーとなって起こるため生理前後に頭痛が起こります。よく生理前後の頭痛がPMSと勘違いされていますが、これはれっきとした片頭痛です。
低用量ピル内服中ですと、休薬期間に頭痛が起こりやすい方が多いです。
低用量ピルが使えない片頭痛は?
前兆のある片頭痛は、脳血栓症を誘発するため内服できません。
前兆のある片頭痛は、脳内の血管の収縮拡張などが強いとされており、エストロゲンの血栓化傾向による作用によるものです。その他、40歳以上、肥満、低用量ピル服用中(特に服薬開始3か月以内)などの方は、血栓症のリスクはさらに高くなります。
前兆のない片頭痛(閃輝暗点や脱力発作、言語障害等を伴わない片頭痛)に関しては、内服は可能ですが日本頭痛学会、日本産婦人科学会のガイドライン上でも慎重投与とされています。
低用量ピルに伴う怖い頭痛はどんなものがありますか?
低用量ピルに伴う怖い頭痛の代表例としては、静脈洞血栓症があります。
当院では、年間3,000~4,000人の新規の片頭痛患者様が来院されます。その中では、年間約2~3名の方が静脈洞血栓症を発症しております。発症すると致死率の高い、非常に重篤な疾患です。
静脈洞血栓症の症状は、頭痛、吐き気と一般的な片頭痛と症状が何も変わらず、画像検査で偶発的に発見されることがあり、症状からの鑑別が困難です。症状が進行して脳出血や脳梗塞が起こり意識障害が出現してわかる事も多くあります。低用量ピル内服中の頭痛に関しては適時MRIにて検査をする必要があります。
脳梗塞の発症率も上昇します。脳梗塞の発症率は、年齢や喫煙歴も影響しております。
低用量ピルの種類によって頭痛の起こりやすさの差はあるのか?
エストロゲンの上下に伴い、頭痛が誘発される為エストロゲン量の多いものが頭痛が起こりやすいとされています。
エストロゲンが低下する、ピルの休薬期間にのみ頭痛が起こる方もいます。可能であればジエノゲスト(ディナゲスト®)への変更を推奨しております。ジエノゲスト(ディナゲスト®)はエストロゲンを含有しておらず、開発段階の副作用でも、その他低用量ピルと比較して頭痛の副作用が少ないとされております。0.5mg製剤が特に頭痛に関しては良いとされております。1mg製剤ですと、相対的にエストロゲンに影響を及ぼし頭痛が誘発されやすいとされております。
当院では近隣の複数の婦人科クリニックと連携して薬剤変更等も対応しております。
ピルは1錠中に含まれるエストロゲンの量により高用量、中用量、低用量、超低用量に分類されます。
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高用量
エストロゲンの量が1錠中50μgより多い
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中用量
エストロゲンの量が1錠中50μg
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低用量
エストロゲンの量が1錠中50μgより少ない
(低用量ピルは30μg~35μg)- ルナベルLD/(フリウェルLD/)
- トリキュラー(ラベルフィーユ)
- マーベロン(ファボワール)
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超低用量
エストロゲンの量が1錠中30μgより少ない
(ヤーズ、ルナベルULDは20μg)
※ μg(マイクログラム)