糖尿病治療薬について
糖尿病の薬には、多きくわけて3つの作用機序でお薬の種類があります。
下記の3つのタイプに分けられます。
インスリンの働きを効きやすくするお薬
インスリンの分泌を膵臓から促進したり、血糖値を上げるグルカゴンという物質を抑制するお薬
食べたものからの糖の吸収を抑制する、もしくは尿から糖を排出するお薬
インスリンの働きを効きやすくするお薬
ビグアナイド薬
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作用機序
- 肝臓からの糖の放出は血糖を上げる事を抑制します。
- 筋肉や脂肪組織での糖の取り込みが低下や小腸における糖の吸収増加は血糖を上げる要因となるのですが、このお薬は、インスリン抵抗性改善して筋肉・脂肪組織での糖取り込みを促進作用します。
- 小腸での糖吸収抑制作用もあり、複数の作用により血糖値を改善します。
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服用時間
- 食後
副作用
- 低血糖、胃腸障害、乳酸アシドーシス
SU薬に比べると血糖値を下げる力は弱いのですが、体重が増加しにくいお薬です。 - ビグアナイド薬のみの治療では、低血糖を起こす可能性は少ないといわれています。使いやす為、このお薬から処方を開始する事が多いです。
ビグアナイド薬一覧
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メトグルコ(メトホルミン製剤)
- 成人における最高投与量は薬剤成分として1日2250mgまで使用可能です。
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グリコラン(メトホルミン製剤)
- 原則として、成人における最高投与量は薬剤成分として1日750mgまでです。あまり使いません。
チアゾリジン薬
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作用機序
- 脂肪や筋肉などでインスリンの効きをよくして、血液中のブドウ糖の利用を高めて血糖値を下げます。
- 糖尿病は血糖値が高い状態であり、その原因が血糖を下げるインスリンが効きにくくなっている事が多くあります。
- インスリンへの抵抗性が増え事により、筋肉組織や脂肪組織における糖の取り込みや糖の利用が低下し、血糖が上昇します。
- インスリンへの抵抗性が増えると肝臓での糖の放出が増え、血糖が上がりやすくなる本剤はインスリン抵抗性を改善することで、筋肉組織及び脂肪組織における糖の取り込みや糖の利用を促進し、肝臓における糖の放出を抑制することで血糖値を改善します。
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服用時間
- 食後
副作用
- 低血糖
- むくみ
- 肝障害
- 体重増加
チアゾリン薬一覧
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アクトス(ピオグリタゾン製剤)
- OD錠(口腔内崩壊錠)があり、嚥下機能の低下した患者などへのメリットがあります。
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合剤について
- 本剤の成分と他の糖尿病治療薬との配合剤があります。
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ビグアナイド系薬との配合剤(メタクト配合錠)
- DPP-4阻害薬との配合剤(リオベル配合錠)
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スルホニルウレア系薬(SU剤)との配合剤(ソニアス配合錠)
- このお薬は、糖尿病治療において脳梗塞の再発予防にも効果があると言われています。
インスリンの分泌を膵臓から促進したり、血糖値を上げるグルカゴンという物質を抑制するお薬
DPP-4阻害薬
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作用機序
- インスリンの分泌をうながすホルモンであるGLP-1の働きを高めます。GLP-1は、食事をとると小腸から分泌されます。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンであり、膵臓から分泌されます。
- 体内に食物が入った後にインスリン分泌を促すインクレチン(GLP-1などの消化管ホルモンの総称)という物質があります。
- GLP-1はインクレチンの一つで、体内でDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)という酵素によって分解されるため、DPP-4を阻害すればGLP-1の作用の減弱を抑えることができるます。
- このお薬は、DPP-4を阻害することによってGLP-1の量を増やし、インスリン分泌を促進することで血糖値を下げます。
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服用時間
- 1日1回
副作用
- 低血糖、胃腸障害、嘔気、嘔吐 たまに消化器症状が出ます。低血糖などは起こしにくく使いやすお薬で、ビグアナイド薬と併用してよく使います。
DDP4阻害薬一覧
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グラクティブ,ジャヌビア(シタグリプチン製剤)
- 薬の代謝・排泄に関して:腎機能の影響を受けやすい為、腎機能が低下している場合は減量するなど調節する場合があます。
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スージャヌ配合錠(ジャヌビアとSGLT2阻害薬との配合剤)
- SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン)との配合剤にはスージャヌ配合錠があります。
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エクア(ビルダグリプチン製剤)
- 薬の代謝・排泄に関して:肝機能の影響を受けやすい為、原則として、重度の肝機能障害がある患者へは使用しません。
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エクメット配合錠(エクアとビグアナイド薬との配合剤)
- ビグアナイド薬(メトホルミン)との配合剤としてエクメット配合錠
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ネシーナ(アログリプチン製剤)
- 薬の代謝・排泄に関して:腎排泄型です。このため、腎臓病のある人は慎重に用いる必要があります。
- 本剤の成分と他の糖尿病治療薬との配合製剤に関して:チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)との配合剤(リオベル配合錠)がある/ビグアナイド薬(メトホルミン)との配合剤(イニシンク配合錠)がある
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リオベル配合錠(チアゾリジン薬との配合剤)
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イニシンク配合錠(ビグアナイド薬との配合剤)
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トラゼンタ(リナグリプチン製剤)
- 胆汁排泄型の特徴を持ち、一般的に腎機能障害や肝機能障害がある場合でも用量の調節が不要とされる
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テネリア(テネリグリプチン製剤)
- 体内で薬剤の成分が肝臓と腎臓の2つのルートで消失する特徴を持つ
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カナリア配合錠(テネリアとSGLT2阻害薬との配合剤)
- 本剤の成分と他の糖尿病治療薬との配合製剤に関して:SGLT2阻害薬(カナグリフロジン)との配合剤としてカナリア配合錠
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スイニー(アナグリプチン製剤)
- 肝臓での代謝をほとんど受けないことから、肝機能障害がある場合でも投与によるリスクが少ないなどのメリットが考えられる
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オングリザ(サキサグリプチン製剤)
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ザファテック(トレラグリプチン製剤)
- 服用方法に関して:週に1回服用するタイプの薬剤
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マリゼブ(オマリグリプチン製剤)
- 服用方法に関して:週に1回服用するタイプの薬剤
スルフォニル尿素薬(SU薬)・速効型インスリン分泌促進薬
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作用機序
- インスリンは血糖を下げる唯一のホルモンであり膵臓のβ細胞から分泌されます。このβ細胞にはスルホニルウレア受容体(SU受容体)というものが存在し、この受容体がインスリン分泌に関わっています。このお薬は、は膵臓β細胞のSU受容体に結合することで膵臓からのインスリン分泌を促進し、血糖値を下げます。
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服用時間
- 食前30分前または食後
副作用
- 低血糖、体重増加 空腹時の血糖値をよく下げるという特徴があり、経口血糖降下薬で、最も多く使われているお薬です。しかし、患者さんのすい臓に、インスリンを分泌する力がないと効果が期待できません。服用後、食事をとらないと低血糖を起こす可能性があります。長期間使用していると、膵臓が疲れ切ってしまい、インスリンが出なくなり、効果が弱くなります。どうしてもインスリン治療が嫌や、一人暮らしで恒例の為注射が困難等の人にか、基本的には使いません。
- 服用後、食事をとらないと低血糖を起こす可能性があります。
スルフォニル尿素薬(SU薬)・速効型インスリン分泌促進薬一覧
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アマリール(グリメピリド製剤)
- OD錠があります。嚥下機能の低下した患者などへのメリットがあります。
- インスリンの効果を高める働きもあるとされる
- 本剤の成分と他の糖尿病治療薬との配合製剤に関して:チアゾリジン系薬(アクトス)との配合剤は、ソニアス配合錠
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オイグルコン ダオニール(グリベンクラミド製剤)
- 一般的に強い血糖降下作用をあらわす反面、低血糖などの副作用により注意が必要となる
- 高齢者では、使いにくいお薬です。
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グリミクロン(グリクラジド製剤)
- 血小板機能抑制作用(血液を固まりにくくする作用)などをあらわすとされる
食べたものからの糖の吸収を抑制する、もしくは尿から糖を排出するお薬
α-グルコシダーゼ阻害薬
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作用機序
- 小腸でのブドウ糖の分解・吸収を遅らせて、食後の急激な血糖値の上昇を抑えます。
- 食物が体内に入ると分解されてショ糖(砂糖)などの二糖類になり、α-グルコシダーゼという酵素によってブドウ糖と変換され、血管へ吸収され血糖値が上昇します。α-グルコシダーゼを阻害すると、血管への糖の吸収を遅らせることができ、食後の血糖値の上昇が緩やかにできます。
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服用時間
- 食事の直前
副作用
- 腹の張りやおならの増加します。町内で二糖類が増加し大腸菌がガスを作るためです。
α-グルコシダーゼ阻害薬一覧
- セイブル(ミグリトール製剤)
- グルコバイ(アカルボース製剤)
- ベイスン(ボグリボース製剤)
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セイブル(ミグリトール製剤)
- OD錠(口腔内崩壊錠)があり、嚥下機能が低下している患者などへのメリットがあります。どちらかというと、一般的に、消化器症状の中では便秘に比べて下痢の方がおこりやすい印象です。
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グルコバイ(アカルボース製剤)
- OD錠(口腔内崩壊錠)があり、嚥下機能が低下している患者などへのメリットがあります。
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ベイスン(ボグリボース製剤)
- OD錠(口腔内崩壊錠)があり、嚥下機能が低下している患者などへのメリットが考えられます。
- 耐糖能異常における2型糖尿病の発症を抑える目的で使用する場合もあるので、誰にでも使いやすいお薬です。
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本剤の成分と他の糖尿病治療薬との配合製剤に関して
- 本剤の成分と糖尿病治療薬のグリニド系薬(ミチグリニド)との配合剤には、グルベス配合錠があります
SGLT2阻害薬
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作用機序
- 尿からの糖分の排泄を促進することで、血糖を下げます。血糖値は糖が血管内へ吸収されると上昇します。
- 腎臓おいて尿(原尿)が送られる管に尿細管というものがあるのですが、尿細管の一部では尿から血管へ糖などの吸収(再吸収)が行われます。
- 尿細管から血管へ糖を運ぶ役割を果たしているのがSGLT2という運び屋的な物質です。
- このSGLT2を阻害すると血管への糖の再吸収が阻害され、尿中に残った糖はそのまま尿として体外へ排泄されます。
- 血管への糖の吸収が阻害され、血液中の糖の量が減少し血糖値が下がります。体重減少も期待できます。
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服用時間
- 1日1回
- 朝食前又は朝食後
副作用
- 低血糖
- 尿路感染症
- 尿細管で糖の再吸収が阻害されると排泄される尿量(水分量)も増加します(頻尿になる)。
- この作用により、脱水になる事があります。また尿中の糖濃度が高いため尿路感染症にかかりやすい場合もあり高齢者では注意が必要です。
SGLT2阻害薬一覧
- スーグラ(イプラグリフロジン製剤)
- スージャヌ配合錠(スーグラとDDP4の配合剤)
- フォシーガ(ダパグリフロジン製剤)
- ルセフィ(ルセオグリフロジン製剤)
- ジャディアンス(エンパグリフロジン製剤)
- トラディアンス配合錠(ジャディアンスとDDP4阻害薬の配合剤)
- デベルザ、アプルウェイ(トホグリフロジン製剤)
- カナグル(カナグリフロジン製剤)
- カナリア配合錠(カナグルとDDP4の阻害薬の配合剤)とは?
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スーグラ(イプラグリフロジン製剤)
- 初代SGLT2阻害薬です。通常、1日1回50mgを投与し、効果不十分な場合には1日量として100mgまで増量可能の薬剤です。肝機能が低下している場合などに対する低用量規格(25mg錠)もあります。
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本剤の成分と他の糖尿病治療薬との配合製剤に関して
- スージャヌ配合錠:DPP-4阻害薬(シタグリプチン)との配合剤
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フォシーガ(ダパグリフロジン製剤)
- 糖尿病の治療に使われる場合の用量
- 通常、1日1回5mgを投与し、効果不十分な場合は1日量として10mgまで増量可能です。
- 慢性心不全や慢性腎臓病の補助治療にも使われます。心疾患、腎疾患の人には併用しやすいお薬です。
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ルセフィ(ルセオグリフロジン製剤)
- 通常、1日1回2.5mgを投与開始します。効果不十分な場合は1日量として5mgまで増量可能です。
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ジャディアンス(エンパグリフロジン製剤)
- 通常、1日1回10mgを投与し、効果不十分な場合には1日量として25mgまで増量可能です。
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本剤の成分と他の糖尿病治療薬との配合製剤に関して
- DPP-4阻害薬(リナグリプチン)との配合剤として、トラディアンス配合錠
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デベルザ、アプルウェイ(トホグリフロジン製剤)
- 通常、1日1回20mgを投与します。
-
カナグル(カナグリフロジン製剤)
- 通常、1日1回100mgを投与します。
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本剤の成分と他の糖尿病治療薬との配合製剤に関して
- DPP-4阻害薬(テネリグリプチン)との配合剤としてカナリア配合錠