群発性頭痛とは
群発性頭痛は、何年かに一度くる事が多く、
群発期に入ると深夜から未明の決まった時刻に起こることが多い頭痛です。
1日2回、朝晩の方も多いです。片側の目を中心に激烈な痛みが起こります。
開始・終了は1分程度と急激であり、15分~180分持続し痛い側の目は充血・流涙し、まぶたは下がり、汗ばみ、鼻水も出るという頭痛です。
片頭痛と主に見分けるポイントは持続時間と確実に片側に起こる事です。
片頭痛は”片”とついていますが、頻繁に場所が移動します。
群発性頭痛は、三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)の中に含まれます。
三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)の分類と特徴
群発性頭痛の種類
反復性群発性頭痛
(未治療の場合に)7日~1年間続く群発期が3ヵ月以上の寛解期をはさんで2回以上ある
発作性片頭痛
- 重度の一側性の痛みが、眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に2分間~30分間持続する、発作の頻度は、5回/日を超える。
- 発作は治療量のインドメタシンが有効。
- 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作中等度~重度の一側性の頭痛が、眼窩部、眼窩上部、側頭部またはその他の三叉神経支配領域に、単発性あるいは多発性の刺痛、鋸歯状パターン(Saw〜Toothpattern)として1~600秒間持続する。
持続性片頭痛
- 3ヵ月を超えて存在し、中等度~重度の強さの増悪を伴う結膜充血または流涙(あるいはその両方)、鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)、眼瞼浮腫、前額部および顔面の発汗、縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)。
- 治療量のインドメタシンが有効。
群発性頭痛の特徴
周期
- 1回で終わる人から繰り返す人まで様々です。
- 半年ごと、2〜3年おきなど。60例の長期間経過観察では、その内26.5%において、単一の群発期で済んでいます。その報告のなかで、2回目の群発頭痛発作は3年以内に83%でみられるとしています。また189人を10年以上経過観察した報告では、反復性群発頭痛と当初診断された症例の13%が慢性群発頭痛へと移行し、慢性群発頭痛と当初診断された症例の33%が反復性群発頭痛となります。
- 群発期の長さ:数週間から半年を超えるものもある。1年以上続くものは慢性群発頭痛と言います。
回数
2日に1回、1日1回〜8回に及ぶこともある。多く場合が1日1回~2回。
増悪因子
アルコール飲料、ニトログリセリン、(バイアグラ等です)ヒスタミンが挙げられています。また群発頭痛では大酒家、ヘビースモーカーが多いと報告されています。治りかけでアルコールを飲んで再発する人を何人も見てきました。完全に群発期が終わるまでは飲酒は絶対に控えることをお勧めします。
他の頭痛との合併
緊張型頭痛、片頭痛など、他の頭痛に加え、群発頭痛が起こることもあります。良くならなかったり頭痛の部位が変わった時はその他の頭痛を疑う必要があります。
群発性頭痛の原因として主な仮説を下にまとめました
視床下部のGeneratorの存在
群発頭痛患者ではサーカディアンリズムに関係したメラトニンなどに変化がみられることにより、サーカディアンリズムの中枢に変化が起こっている可能性が考えられる仮説です。
群発頭痛の頭痛発作時には後部の視床下部が活性化していることが、PETを用いた研究で証明されました。 後視床下部灰白質の細胞密度が高いことも明らかにされており、発作性群発頭痛、慢性群発頭痛患者では、片頭痛患者に比し、視床下部前部灰白質が腫大していることが示されました。
結論
視床下部前部が三叉神経系の活性化と頭部自律神経系の異常に重要な働きをしていることが示されている可能性があります。
ニューロペプチドと一酸化窒素(NO)の役割
群発頭痛患者の発作期には、頸静脈血中のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、サブスタンスP(substanceP:SP)、の増加が見られた。酸素吸入およびスマトリプタン皮下注によって、増加したCGRPのレベルが正常者のレベルまで低下したことより、群発頭痛発作時に三叉神経血管系の活性化が生じていることが、実際の群発頭痛患者で証明された。抗CGRP抗体であるガルカネズマブが反復性群発頭痛の発作頻度を低下させたことも、CGRPの病態への関与を示唆している。このように三叉神経血管系におけるニューロペプチドの変化が群発頭痛で起きていると考えられる。
結論
CGRPが効いているので片頭痛と実は似たような作用機序なのか。
内頸動脈の周囲に症候発生の起源を求める考え方
多彩な自律神経症状を伴う疼痛発生機序の責任病巣としては現在のところ、以下の3つがあります。
- 海綿静脈洞説海綿静脈洞内の内頸動脈が拡張することにより眼窩への血流が増加し、洞への還流静脈血流量が増えるが、一方、洞からの静脈血流出路は内頸動脈の拡張により狭くなり、その結果洞内での血液うっ滞が生じ片側眼周囲の疼痛と随伴症状が発現するという説である
- 海綿静脈洞近傍説海綿静脈洞で集合する翼口蓋神経節由来の副交感神経線維、三叉神経由来の痛覚神経線維、上頸神経節由来の交感神経線維に、何らかの興奮が生じると、自律神経症状に加え内頸動脈の拡張が生じるとする説である
- 破裂孔近傍説何らかの原因により側頭骨の頸動脈管内で内頸動脈が拡張し、圧迫機転により交感神経機能を抑制すると同時に、周囲の炎症を惹起し副交感神経系を刺激し群発頭痛特有の自律神経症状を呈するものと考えられる.特に大浅錐体神経(副交感神経)が内頸神経(頸部交感神経)と内頸動脈壁上で合流する部位には副交感神経系と感覚神経系のニューロトランスミッターを含有する小神経節(内頸神経節)の存在がヒトで確認されており、群発頭痛の発症機序に関与していることが推定される。
群発性頭痛の推奨される検査
頭部MRI検査
群発頭痛の鑑別疾患として、くも膜下出血等の頭痛が挙げられます。頭部MRAにて脳動脈瘤の有無の精査が必要です。また、イミグラン(トリプタン)の自己注射が最も効果的でありますが、脳内の血管を収縮させるため、狭窄の有無などの精査を必要とします。
群発性頭痛の治療法
スマトリプタン(イミグラン®)
内服、点鼻、自己注射とありますが、自己注射を推奨しております。
連日頭痛が起こっても保険適応で1日2回出せるためです。
その他内服点鼻は、片頭痛にしか保険適応が無く月に10個までとなります。
酸素吸入も有効です。在宅酸素療法も保険適応があります。
片頭痛の新薬として2021年に国内でも発売されたガルカネズマブ(エムガルティ®)は、米国では群発頭痛に有効性が認められ、認可されています(300mg)。しかし、残念ながら、国内・欧州では、片頭痛のみに認可されていて、群発頭痛には保険適応はありません。今後、日本でも保険適応される事を期待します。