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天気痛、気象頭痛、気象関連片頭痛

天気痛、気象頭痛の概要

天気痛、気象頭痛は、気圧や気温、湿度などの気象条件の変化に体が反応して生じる症状群です。主に頭痛、めまい、倦怠感が起こり、低気圧の接近時に症状が顕著になることがあります。

頭痛との関連

低気圧が近づくと気圧が下がり、体内の気圧とのバランスを取るために血管が拡張します。これが原因で、頭痛が引き起こされることがあります。

対処法

  • 水分補給: 脱水状態を防ぐため、常に十分な水分を摂取します。
  • 規則正しい生活: 不規則な生活は体のリズムを乱し、頭痛を引き起こすことがありますので、一定の生活リズムを保つことが大切です。
  • ストレス管理: ストレスは頭痛を悪化させる要因となり得るため、リラクゼーション技法を用いたり、趣味に没頭するなどしてストレスを管理します。
  • 適度な運動: 定期的な運動は全体的な体調を整え、頭痛の予防に寄与します。
  • 薬物療法: 片頭痛を持たれている方が上記影響にて頭痛発作が起こっており、一般的な片頭痛治療をお勧めしております

気象病のメカニズム

  • 気圧変動への反応: 急激な気圧の低下が内部の圧力バランスを崩し、血管の拡張や体液の移動を引き起こします。
  • 自律神経の不均衡: 気温や湿度の変動が自律神経に影響を与え、身体のさまざまな機能に不調をもたらすことがあります。
  • セロトニン調節: 気象変化が脳内のセロトニンレベルを変動させ、気分や痛みに影響を与えることがあります。
  • 炎症反応: 気象変動が体内での炎症反応を促し、痛みや不快感を引き起こすこともあります。

以前から、天気と片頭痛の間には何らかの関連があると考えられていますが、その具体的な根拠や詳細な関連性についてはまだ多くが不明です。特に、雨の日や台風の前後には片頭痛を訴える患者が増えるということが、医療現場での体感としても報告されています。これは、天気の変化が片頭痛のトリガーとなることを示唆しています。

しかし、天気の変化による影響は個人差が大きく、全く影響を受けない人もいれば、非常に稀にしか影響を受けない人もいます。このことから、天気痛の発生機序や影響を受けやすい個体差について、さらなる研究が必要であることが明らかです。今回、天気痛 気象頭痛 気象関連片頭痛に関する論文を下記に要約しました。

天候と片頭痛の関連について

台風が発生すると頭痛が起こる、雨が降ると頭痛でしんどい、季節の変わり目で気温の変動で頭痛が起こるなどの経験をした人は多いのではないでしょうか?
5月も台風1号の発生と同時に外来にひどい頭痛を経験された方が沢山来られました。これからの季節、不安や心配をされている方も多いのではないでしょうか。

実は片頭痛と天気の関係の原因は明らかになっていません。ただ、気象条件の変化と片頭痛について調べた論文はいくつかあり、それをまとめられた論文を見つけました。非常にわかりやすくまとめられていますので、興味を持たれた方はぜ読んでみてください。

何より天気予報で予測し、痛み止めを持ち歩く、予定を詰め込まないなど備えるだけでも大きな予防治療となりますので一度天気と片頭痛の関係についてこちらで勉強してみるのはいかがでしょうか。

「気象要因が片頭痛の発作発現の与える影響」 辰元宗人 平田幸

はじめに

片頭痛は4~72時間程度持続する中等度から重度の頭痛に加え、体動による増悪、悪心・嘔吐や過敏症(光・音・臭い)を特徴とする反復性の疾患である。片頭痛患者はこれらの症状により、日常生活や社会活動に支障をきたし、生活の質や生産性を低下させている。
片頭痛の治療は薬物療法(急性期治療、予防療法)が中心となるが、誘因を正確に把握することで治療をより効果的に実施できる場合がある。

片頭痛の誘因はストレス(79.7%)が最も多く、続いて女性ホルモン(65.1%)、絶食(57.3%)、天候(53.2%)、睡眠障害(49.8%)、香水や臭い(43.7%)、頭部の痛み(38.4%)、光(38.1%)、アルコール(37.8%)、煙(35.7%)、夜ふかし(32.0%)、暑さ(30.3%)、食品(26.9%)、運動(22.1%)、性的活動(5.2%)の順であった。
本稿では、片頭痛患者が誘因として多く自覚する「天候」を取り上げ、どんな気象要因が片頭痛の発作発現に影響を与えているか解説する。

気象要因と片頭痛

片頭痛に関連する気象要因は、これまでに、気圧、気温、湿度、降雨量、季節、時間帯、雷などが報告されているが、天候が片頭痛発作の誘因であることの科学的根拠の結論はいまだに出ていない。
Prince(米国)らは、頭痛外来の片頭痛患者77例の頭痛カレンダー(2~24カ月間)を検討したところ、事前に天候要因を過敏だと感じていたのは48例(62.8%)だが、結果から天候要因に過敏であったのは39例(50.6%)であった。以下は、個別の気象要因と片頭痛との関連について取り上げていく。

気圧と片頭痛

気圧は片頭痛の気象要因として最も報告されており、日常診療においても、片頭痛患者から、低気圧が近づいているので頭痛になりましたとか、沖縄に台風が発生したので頭痛が起きそうですとよく聞く。

Kimotoらにより、片頭痛患者28例の頭痛ダイアリーと気圧の変化との関係を前向きに検討した報告がある。
片頭痛は、頭道発生日から翌日までの気圧差が5 hPa以上低くなると増加し、頭痛発生日から2日後までの気圧差が5hPa以上高くなると減少することが示された。また、天候変化が片頭痛の発症と関連したのは18例(64%)であった。Okumaらは、片頭痛34例の頭痛ダイアリーと気圧変動を調べた。
結果は、片頭痛発症時の気圧は、低気圧に近づくと1,003~1,007 hPaの範囲に収まり、標準気圧(1013 hPa)よりわずかに低い6~10hPaの気圧になると片頭痛を発症することがわかった。

また、Ozekiらは、ドラッグストアにおけるロキソプロフェン(ほとんどが頭痛で購入)の販売量と気象データを前向きに調査した。
結果、気圧が低下するとロキソプロフェンの販売割合が増加し、ロキソプロフェン購入日は購入前日に比べて降水量、平均湿度、最低温度が増加した。

2023年にはKatsukiらにより、スマートフォンアプリ(頭痛―る®)のビッグデータを用いて、天候と頭痛発症の関係をディープラーニングなどで調査した報告が行われている。
2020年12月から2021年11月までの頭痛記録データのうち、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、愛知県、石川県で記録された片頭痛が疑われるユーザーの頭痛イベントと気象データを分析した。4,375例〔平均年齢(34歳)・女性(89.2%)〕のユーザー135,283件の頭痛データを解析した結果、頭痛イベントと関連したのは、低気圧、高湿度、降雨、6時間前と比較して大きな気圧低下、午前6時の高気圧、翌日午前6時の低気圧、1週間気圧が低いまま、1週間かけて気圧が大きく低下であった。

一方で、Zebenholzer (オーストリア)らは、片頭痛238例の冬(90日間)の頭痛カレンダーを検討した結果、高気圧、風速低下、日照時間の長い日に頭痛発作が増加したが、これらの関連はいずれも有意でなかった。BolayとRapoport(トルコ)によるレビューでも、低気圧だけでは片頭痛を誘発する可能性が低いことを示唆している。

気温・湿度と片頭痛

気温・湿度も気圧ほどではないが報告されており、日本では梅雨時期に頭痛発症が多くなる片頭痛患者が一定数存在している。

Mukamal(米国)らは、救急部に頭痛で受診した思者7,054例を対象に受診前数日間の気象データを検討するケース・クロスオーバー研究を行った。頭痛や片頭痛による救急部の受診は、受診前24時間の平均気温が高い日の頻度が高かった。
また、入院の48~72時間前の低気圧との相関は弱かった。Yilmaz(トルコ)らは、救急部(1年間)に片頭痛で入院した3,491例(1日平均思者数9.6土4)と天候を後ろ向きに解析した。1日あたりの患者数と最高気温、平均気温、最低気温、1日あたりの気温変化との間に有意な相関関係がみられた。患者数と湿度は負の相関関係がみられたが、患者数と月の満ち欠けは有意な関係はなかった。

ドイツにおいて、スマートフォンアプリとウェブフォームから約4,700件の片頭痛メッセージを収集し、気温変化と片頭痛発作の発症頻度を分析した結果、温度の上昇と下降の両方が、片頭痛メッセージ数の有意な増加につながっていた。
5℃の温度上昇(低下)により、片頭痛メッセージ数は19土7%(24土8%)増加した。

片頭痛患者20例の頭痛ダイアリーとドイツ(ベルリン)の気圧、気温、湿度との相関を12カ月間調べた結果、片頭痛発作は午前4時に最も頻繁に始まり、午前4時から8時の間に最も強くなった。
天候と片頭痛発作との間に非常に有意な関連が6例でみられた。頭痛の強さだけでなく、頭痛発作の発症は、気温が低く、湿度が高いことと関連していた。反復性片頭痛98例に電子質問票を用いて、片頭痛の発症を前向きに検討(平均45日)した。
片頭痛の発生と気温、相対湿度、気圧、微小粒子状物質、二酸化硫黄、二酸化窒素、オゾン、一酸化炭素を調査した結果、相対湿度が高いほど暖かい季節の片頭痛発症確率が高く、交通関連ガス状汚染物質は寒い季節の片頭痛発症確率が高いことに関連する可能性があることがわかった。

季節・その他と片頭痛

季節の変わり目に頭痛が発症すると片頭痛患者からよく聞くが、季節性については一定の見解が得られていない。

夏期と冬期の光条件が極端な北極圏のような緯度に住む片頭痛患者は、季節や日光が片頭痛の誘因となることがある。
ノルウェー北部の住民を対象とした質問紙調査では、片頭痛は夏に頭痛発作が多く、片頭痛以外の頭痛は暗い季節に多かったと報告した。その後のダイアリーを用いた研究では、この季節的な片頭痛の関連は証明できなかった。

ノルウェーの片頭痛患者169例(前兆のある片頭痛98例、前兆のない片頭痛71例)に質問紙調査を実施した。
107例(63%)に片頭痛発作頻度の季節変動がみられた。明るい季節に頭痛発作が頻発したのは、前兆のある片頭痛47%、前兆のない片頭痛17%であった。前兆のある片頭痛は、頭痛発作時の光過敏や誘因としての光照射を報告する頻度が、前兆のない片頭痛よりも有意に高く、頭痛発作を予防するためにサングラスを使用する頻度も有意に高かった。

2010~2014年までの三次小児病院(米国)における頭痛による救急部受診の電子カルテを用いて後ろ向きに調査した。
頭痛の受診(6.572件)は、ほかの季節(101±19回/月)に比べて秋(133土27回/月)に増加した。秋の受診増加は学年開始と一致しているため、学業上のストレスやスケジュール変化が、学齢期の頭痛増加や救急部受診の増加につながると考察している。

1993~2000年にかけてオタワ(カナダ)の病院に受診した片頭痛4,039件について、ケース・クロスオーバー研究を行った。
片頭痛の受診と、降水関連の気象現象(霧、雪、雨、雷)、受診前24時間の気圧、風速、相対湿度に関連はなかった。

Elcik (米国)らは、ノースカロライナ州の都市圏で7年間にわたった調査において、熱帯気団の日に片頭痛の救急部受診が増加することを報告した。

Cooke(カナダ)らは、片頭痛(75例)におけるアルバータ州のチヌーク(暖かい西風)の影響を調査した。結果は、チヌーク前日と強風チヌーク(風速>38km/h)の日はどちらも、片頭痛思者の一部で片頭痛が発症する確率を高めた。

オハイオ州とミズーリ州(米国)の片頭痛患者90例の研究では、ほかの変数を調整した場合でも、雷が片頭痛の独立した危険因子であることが示唆されている。

おわりに

これまでに報告されている片頭痛の気象要因として関連性が高いのは、低気圧、高・低温度、高湿度、降雨があげられる。今後は、片頭痛と気象に関する病態解明が解き明かされることが望まれる。

文献

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  4. Kimoto K, Aiba S, Takashima R, et al. Influence of barometric pressure in patients with migraine headache. Intern Med 2011 ; 50 : 1923-8.
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  7. Katsuki M, Tatsumoto M, Kimoto K, et al. Investi-gating the effects of weather on headache occurrence using a smartphone application and artificial intelligence : A retrospective observational cross-sectional study. Headache 2023 ; 63 : 585-600.
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院長 山田による要約

獨協医科大学の辰元先生、平田先生による論文です。

結論としては、科学的根拠は明らかになっていないものの、片頭痛の気象要因として関連性が高いのは、低気圧、高・低温度、高湿度、降雨があげられます。
中でも、気圧が下がる時に片頭痛を引き起こすとの報告が顕著だったと思います。

片頭痛発症時の気圧は、低気圧に近づくと1,003~1,007hPaの範囲に収まり、標準気圧(1013hPa)よりわずかに低い6~10hPaの気圧になると片頭痛を発症することが今回の論文よりわかっております。

論文中にも記載がありましたが、片頭痛がある方向けの天気予測アプリとして頭痛ーるというものがあります。頭痛ーるは、気圧の変化による体調不良が起こりそうな時間帯の確認や、痛み・服薬記録ができる気象予報士が開発した気象病対策アプリです。院長も常日頃より頭痛―るは見ておりますが、患者様の頭痛ダイアリーと比較しても非常に正確に連動しており、事前の対策に有効です。

片頭痛の発作が不安な日には、痛み止めを持っていく、スケジュールを少し調整するなどのちょっとした対策もできるのでぜひ一度調べて見てください。

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