脳卒中予防外来について
脳卒中予防外来は、生活習慣病の治療、MRIにより定期的な画像チェックにて脳卒中の発症、再発を未然に防ぐ事を目的としています。
脳卒中予防外来を受診を勧める人
- 手足のしびれ
- 頭痛
- ふらつき、まっすぐ歩けない、歩きにくい
- 力が入らない
- 物が2重に見える
- 麻痺
- 舌が回らない
- ふらつき
- 飲み込みにくい(嚥下障害)
- 急に生じためまい
- 箸が使いにくい
- 字が書きにくい
- 糖尿病、高血圧、高脂血症をお持ちの患者様
脳卒中予防外来を受診するメリット
- かくれ脳梗塞(無症候性脳梗塞)を発見できる
- 症状が出る脳梗塞の予防ができる
- クモ膜下出血の原因を未然に発見
- 微小脳出血を未然に発見できる
- もやもや病、脳動静脈奇形、海綿状血管腫、硬膜動静脈瘻等の異常が発見できる
脳卒中予防外来で見る病気、見つかる病気、治療法は?
脳梗塞の色々(かくれ脳梗塞、動脈硬化による脳梗塞、心原性脳梗塞)
症状
- ふらつき、まっすぐ歩けない、
歩きにくい - 力が入らない
- 麻痺
- 舌が回らない
- ふらつき
- 飲み込みにくい(嚥下障害)
- 急に生じためまい
無症候性脳梗塞(かくれ脳梗塞)
年齢を重ねるごとにMRI検査で発見される事が増える病変です。年をとれば全く無い方はいないのですが、若年でも高血圧、糖尿病、高脂血症、運動不足、喫煙、大量飲酒等によって増える事が報告されています。MRIで多くの無症候性脳梗塞(白質病変)を認める方は将来、脳梗塞認知症の発症率が高い事になります。30~40代の内にMRI検査で指摘された方は生活習慣の見直しによって、将来の脳梗塞、認知症の予防が可能です。血管年齢測定ABI等により数値で評価し、高血圧、糖尿病、高脂血症の治療を行っていきます。食事指導、運動量療法も同時に進めていきます。
ラクナ梗塞(小さな空洞梗塞)
脳の深部の極めて細い血管(穿通枝と呼ばれる血管です)がつまる事によって起こる脳梗塞です。小さな梗塞が色々な場所にでき、手足の麻痺などの症状が出ず患者様は気が付かない事も脳梗塞です。生活習慣病をお持ちの方(糖尿病、高血圧、高脂血症)がリスクになり早い方で30~40代から見られるようになります。
CTでは殆ど分からず、診断にはMRI検査が有用です。
発症症は、高齢者に多く、夜間や早朝に発症し、朝起きたら手足のしびれや力が入らない(運動障害)、あるいは言葉が話しにくいといった症状に気がついて、翌日救急車や症状が軽い方は歩いて病院に来られる方が多い印象です。基本的には症状も軽くリハビリで良くなる事も多いですが、運動、感覚を支配する領域で起こった場合、麻痺、しびれが強く残る事があります。高血圧が最も重要な危険因子であり、他には糖尿病、脂質異常症、喫煙が重要です。再発予防には危険因子の発見・管理が大切です。
アテローム血栓性脳梗塞
脳内の幹となる太い動脈や内頚動脈の動脈硬化が進行する事により血栓が形成され、血管の壁から血栓が、剥がれて飛んでいく事により脳の血管をつまらせてしまうことによって起こる脳梗塞です。”アテローム”とは、粥状硬化(じゅくじょうこうか)という意味です。動脈硬化でおこる血管の変性のことを言います。高血圧、高脂血症、糖尿病などの動脈硬化の危険因子が、粥状硬化を促進します。前記危険因子を多く持っている方に多い脳梗塞です。
このタイプの脳梗塞は、一時的に、手足が動かしにくい、痺れる等の前兆が、比較的多いとされます。動脈硬化が強く、血管の狭窄率が高くなるほど、脳梗塞を発症する危険性が高まります。診断は、MRIによるMRA(脳血管撮影、頸動脈撮影)、頸部エコーによる評価、血管年齢測定ABIを行い多角的に評価する必要があります。
危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙です。
心原性脳梗塞
名前の通り、心臓内に出来た、血栓が心臓の拍動の際に頭の中に飛んでしまい、詰まってしまうタイプの脳梗塞です。
最も多い原因は、心房細動という不整脈によるものです。
心房細動は高齢者に多く、70歳をこえると5~10%の人に起こるといわれています。心房細動の症状は、動悸等があります。心房が細かく震えることによって、血流の流れが遅くなり血栓を生じます。脳梗塞の原因となるところが問題です。 脳卒中データバンク2015では、急性期脳梗塞患者の中、心房細動の合併率は男性21.8%、女性26.2%であり、高齢になるに連れて有病率の増加しております。
心臓内にできた血栓は、脳内の太い血管を詰まらせるため、急激に意識障害などの重篤な症状が出現し、死に至ることもあります。多くの場合は突然発症です。
心房細動は出たり、消えたりするやっかいな不整脈です。心原性脳梗塞で運ばれてくる方の半分は、一般的な診療所での心電図では、不整脈が見つかりません。50代以上の方は、ホルター心電図での精査をお勧めす。
脳出血
症状
- ふらつき、まっすぐ歩けない、
歩きにくい - 力が入らない
- 麻痺
- 舌が回らない
- ふらつき
- 飲み込みにくい(嚥下障害)
- 急に生じためまい
脳出血とは
脳出血とは、字の通り脳の中で血管が切れて出血する事を言います。脳の中の細い血管が切れてなる事が多いです。
脳出血の原因は、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙による動脈硬化等が関連しています。殆どが高血圧性の脳出血です。
以前は生命の危機にかかわるような大出血が多かったのですが、クリニックでの血圧管理や降圧剤の進化によって、脳出血による死亡率は減少しています。
若い人では40代から、生活習慣病に関わる脳出血を起こされる方がいます。最近では、MRIの進歩により無症候性の微小脳出血が見つかる事が多いです。CTでは大きな脳出血しか分かりませんが、MRIだと、患者様が気づかない間に起こした脳出血を発見出来る事が多くあります。MRIによるMRA(脳血管撮影、頸動脈撮影)、血管年齢測定ABIにより早期に徴候を掴むことが大切です。
高血圧以外の脳出血の原因としては、もやもや病、脳動静脈奇形(AVM)、硬膜動静脈漏、海綿状血管腫などの病気があります。
症状は様々ですが、急に倒れ救急車で運ばれる事が多いです。クリニックに来られる症状の軽い患者様は、ふらつき、まっすぐ歩けない、力が入らない、言葉が出ない等周りの方が気づく事が多いです。
くも膜下出血
くも膜下出血について動画でもご覧いただけます
症状
- 頭痛
- 片頭痛、緊張性型頭痛持ちの患者様の
いつもと違う頭痛
クモ膜下出血とは
脳内の太い幹となる血管は、脳と脳の間、いわゆる溝の中を走行しています。そのため、血管が裂けて出血した場合には、血液は脳とくも膜との間のすきま(くも膜下腔といいます)に急激に広がり、くも膜下出血となります。細い脳にめり込んでいる血管が、破裂した際は、くも膜下出血になります。
原因
くも膜下出血の原因は、脳動脈瘤が殆どです。脳の血管と血管の分岐の部分に出来る血管壁が薄くなって膨れてきた血管の弱い部分が破裂して起こります。動脈瘤は、破裂するまで全く症状が無いのがやっかいです。動脈瘤は100人中2~4人が持っていると言われており、定期的な検査が必要です。今まで検査で指摘されていなくても翌年動脈瘤が指摘される確率は1%と言われております。
40~50歳台から多く発生しますが、最近は高齢者にも多いと報告されています。危険因子としては、血のつながった家族のくも膜下出血、脳動脈瘤の既往歴、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などがあります。
そして残念なことに日本人とフィンランド人に多い病気です。
症状
今まで経験したことのない激しい頭痛(後頭部痛)と嘔吐が突然起こります。元々頭痛持ちの方だと気づかないこともあります。クリニックや病院でも脳神経外科以外だと風邪などの頭痛と勘違いされ見過ごされる事が多くあります。急に意識を失う方から軽い頭痛まで症状は多様です。
治療
カテーテルによるコイル塞栓術や開頭によるクリッピング術があります。当院では、緊急手術が必要な場合、提携病院の信頼できる医師を紹介します。
脳静脈洞血栓症
症状
- 自己免疫性疾患を患っている方の頭痛
- 経口避妊薬内服中の方の頭痛
脳内の太い静脈、主に静脈洞が血栓で詰まってしま病気です。症状が軽いことが多くMRIでも見逃されることがある頭痛です。MRIでもMRVやDWIで丁寧に読影する必要があります。脳神経外科専門医の受診を勧めます。症状は、頭重感、頭痛などがあります。重症化した場合は死につながる怖い病気です。原因としましては、免疫抑制剤等の使用、自己免疫性疾患と経口避妊薬の内服になります。20~40代の経口避妊薬内服(ピル)中の患者様が多い印象です。
もやもや病
もやもや病は、脳で最も重要な血管である「内頚動脈」の先端が細くなり、閉塞してしまう病気です。内頚動脈は左右にそれぞれ1本ずつあり、通常は左右の両方の血管がともに細くなります。内頚動脈の血流が悪くなると、周辺の細い血管が代償性に拡張します。この、代償性に拡張した血管は、検査ではもやもやと見えるので、「もやもや病」と呼ばれるようになりました。
小児期の気を失う、頭痛などの症状で見つかる病気です。
もやもや病になると脳血流が悪くなり脳梗塞を起こしたり、代償性に拡張した血管から脳出血を起こしたりします。もやもや病は日本人や東アジア人に多い病気として知られています。早期発見で治療も可能です。
脳動脈解離(かいり)
主に首の後ろの椎骨動脈という血管が裂ける病気です。原因は、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙があります。裂けて血管が詰まると脳梗塞を起こす一方、裂け目が外壁まで広がるとくも膜下出血を起こします。40~50代の男性に多くくも膜下出血全体の3%を占めます。発症すると、命に係わる病気です。MRIによるチェックを勧めます。
海綿状血管腫
脳の内部の局所に血管の塊ができる病気です。無症状のことが多く、時に出血したりけいれん(てんかん)を起こしたりして症状を出します。症状は、病変の存在する部位によって異なります。
脳動静脈奇形
脳の動脈と静脈とが毛細血管を介さずに直接結びついて、血管のかたまりを作る病気です。非常に小さなものから巨大なものまであります。無症状で偶然発見されることもあれば、脳出血やけいれんを起こすこともあります。
硬膜動静脈瘻
脳を覆っている「硬膜」の動脈と静脈とが、毛細血管を介さずに直接つながる病気です。部位によっては耳鳴りを伴います。
硬膜の病気ですが、硬膜の静脈血が目の血管に逆流すると目が充血したり、目が飛び出たり、ものが二重に見えるようになったりします。また、脳血管に逆流することもあり、この場合には脳出血や脳梗塞を起こします。