薬物乱用性頭痛について
頭痛で毎日(一か月の半分近く)痛み止めを飲んでいる人の頭痛です。下記のようにも言われています。
- 反跳性頭痛
- 薬物誘発性頭痛
- 薬物誤用頭痛
薬剤の過多使用による頭痛は、急性期または対象的頭痛治療薬を3週間以上超えて定期的に乱用した結果として一ヵ月に15日以上起こる頭痛です。
薬物乱用性頭痛は日常生活への師匠度が高く、仕事の効率が低下するなど、経済に与える影響も損失も大きいと言われています。
また乱用する薬材費が高額になるばかりか、医療機関に受診した場合、薬剤乱用性頭痛に対する治療費も必要となり、直接的な経済損失もある。
これらのことから薬剤乱用性頭痛への発展抑制のため、頭痛の慢性化や薬剤乱用につながらないように事前に予防する事が重要とされています。
定義
薬剤の過多使用による頭痛は、急性期または対象的頭痛治療薬を3週間以上超えて定期的に乱用した結果として一ヵ月に15日以上起こる頭痛です。
以前は、反跳性頭痛、薬物誘発性頭痛、薬物誤用頭痛など用語が使用されています。
疫学
薬物乱用性頭痛は、40~50歳台に多く、70%が女性です。
海外での頭痛外来へ来院される患者様の中で薬物乱用性頭痛の占める割合は、ヨーロッパで約30%、米国約50%と言われています。
病態と病因
薬物乱用性頭痛は、一次頭痛を持つ患者が市販薬や非ステロイド性抗炎症剤、トリプタン製剤等、急性期炎症を頻回に服用した場合に起こります。
薬物乱用性頭痛へ進行する基礎疾患には、片頭痛、緊張型頭痛が最も多いです。
診断基準
- ①自分が薬物乱用性頭痛かどうかの判断方法としては、一ヵ月に頭痛は、15日以上起こる日がある。
- ②3か月以上、定期的に一ヵ月の内10日以上複合鎮痛剤のエルゴタミン、トリプタン、オピオイドを使用している
- ③単一成分の鎮痛剤でも3か月以上、月に15日以上服用している。
上記の何れかにあてはまれば、薬物乱用性頭痛と判断します。
治療
薬物乱用性頭痛の治療は、まずは、原因薬物の中止が推奨されます。
原因薬物の即時中止か漸減中止に関いては議論が分かれていますが、明確な結論は出ています。
患者負担の軽減、医療費抑制の観点からは外来での即時中止が推奨されますが、重症な薬物乱用性頭痛では入院での離脱も考慮されるべきと考えます。
薬物中止後に起こる頭痛の治療
薬物乱用性頭痛後に起こる頭痛に関してはステロイドが有効とされています。
予防薬による治療
離脱治療中に頭痛抑制の予防薬の有効が認められています。
海外の臨床試験では、トピラマートやアミノトリプチン(トリプタノール)等が有効であったと報告されています。
日本では、バルプロ酸、ロメリジン(ミグシス)、プロプラノロール(インデラル)、アミノトリプチン(トリプタノール)等があります。
当院では、積極的にヒト化抗CGRPモノクローナル抗体の注射薬による予防治療を行っております。エムガルディ、アジョビ、アイモビーグの3タイプを使用しております。それぞれ特徴があるため、使い分けます。
薬物乱用性頭痛の予後、予防
離脱治療後の再発率は、約30%であり、離脱後も頭痛ダイアリーなどを用いた定期的な薬物接種状況の確認、患者教育が重要です。
薬物乱用性頭痛の予後不良因子には、片頭痛の罹患期間が長い、離脱後に片頭痛発作が多い、離脱後の複合鎮薬内服、薬物接種回数が多い、アルコール、喫煙等があげられます。
薬物乱用性頭痛を予防するためには頭痛ダイアリーなどを用いて急性期頭痛治療薬の使用頻度を確認し、頭痛日数の多い方には、早期に予防薬をお勧めする等の事が必要となります。